イタリアの自主製作恐怖映画監督:ダビデ・メリニ

 

日本では知られていないが、イタリアでは自主映画製作が特に恐怖映画の分野において盛んであり、いくつかの映画祭が開かれている。ジョー・ダマト恐怖映画祭なんてのもあるくらいだ。当HPも自主製作の映画監督や映画祭から宣伝を依頼される時がある。特に、今年第3回目の INTERIORA, MOSTRA CIO' CHE HAI DENTRO (『はらわた―君が内に宿す物を晒せ』というとんでもない名前の映画祭だ)という所は毎年秋口になるとバナー広告とプログラムを送ってくるくる。現在、イタリアの恐怖映画製作を取り巻く環境はあまり良くないみたいだが、こういった催しの中からもいつか新しい才能が生まれてくるかも知れない。M・バーヴァやD・アルジェントらが出て来た頃とは、もう時代が違うのだ。

この頁では、イタリア出身の自主製作の恐怖映画監督の一人で、今回こちらに連絡をくれたダビデ・メリニ Davide Melini について紹介します。

1979年ローマ生まれ。映画業界で働いていた叔父の影響で映画製作に興味を持ち始め、21歳で最初の脚本を書く。2007年より、スペイン・バルセロナ州のマラガに移り住み、そこを本拠地として活動している。スペインにいるのはたまたまであるが、イタリアの映画製作環境は悪くなる一方だそうである。ダリオ・アルジェントの『サスペリア・テルザ』で監督補助を担当した他、いくつかの映画で助監督を経験している。短編映画にこだわりを持ち、監督としては現在はまだ4編の短編を完成させたばかりの段階だが、いくつかの自主製作映画祭で受賞暦がある。脚本は自身でこなし、恐怖は血とか拷問とかによってではなく、物語に与える強いインパクトにより生まれると考えている。

以下、動画へのリンクつきで紹介する二作品は、いずれも多分に寓意的な話である。


 “The puzzle (2008)

ある晩、一人の中年女性が、度々金を無心してくる息子から電話を切った後、ジグソー・パズルを始めるが・・・

http://www.youtube.com/watch?v=E2lXsNDxLyM (英語:約5分)

300ユーロの予算と二人の出演者により、作者の自宅で一晩で撮影した。ローマ国際映画祭で三位入賞。イタリア、スペインのテレビで放送される。

作者による説明

「私達は皆、人生においてパズルを行っている。きっちり完成させようとすればする程、うまくはまらないピースがでてくる。良くも悪くも。運命というものは既に書かれていると私は思う。何者かが家の中にいるような画面構成は、人の運命を支配する女神の視点であり、主人公の運命が既に書かれていてこの結末が彼女自身よって導かれた物である事を示している。」


The sweet hand of the White RoseLa dolce mano della Rosa Bianca)  (2010)

恋人から携帯にしつこく掛かってくる電話にうんざりし車で故郷に帰る若者と、いつも公園で一人で遊んでいて自転車で家に帰る少女がいる。若者は夜の墓場を訪れある墓に跪くが、そこにはその少女の写真があった。

http://www.youtube.com/watch?v=tPWcqEmSkq8 (英語:約17分)

準備期間3ヶ月、撮影5日、スタッフ25人と前作より格段と良い条件で作られている。イタリア、スペイン、アメリカ、南アフリカの数々の映画祭に出品、イタリアの自主製作映画祭 Indie Horror で二位入賞、スペインの短編映画祭 Cesur en Corto で最優秀撮影賞受賞、アメリカの映画祭 Tabloid Witch Awards で特別賞受賞。イタリア、スペインのテレビで放送される。

作者による説明

「再び、逃れられない運命を描いた作品。二人の登場人物の人生が、宿命的に交差する。血の付いた白いバラの花びらが青年を受け入れ難き真実へと導き、闇と絶望の後に救いへの手がかりが見える。」


次回作はDeep shockという題で、イタリア式スリラー生誕50年目に当たる2014年に完成予定とのこと。つまり、『モデル連続殺人!』から数えてという事だね。


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